ルーマニアの風習

Martisor　【マルツィショル】 について。

マルツィショルとは、ルーマニアでの春の訪れの象徴です。このマルツィショルは、赤と白の紐を絡み合わせた小さな装飾品であり、3月のはじめにプレゼントされます。このお守りをあげることはルーマニアの中でも古い習わしのひとつです。
普通は男性も女性も3月の終わりまでマルツィショルを心臓の近いところにつけます。若い女の子や女性は、“マルツィショルデー”と呼ばれる3月1日に男性からマルツィショルをもらい、これは喜びや幸運をもたらしてくれるものだと信じられています。
いくつかの地域では、マルツィショルは3月中ずっと身に着けるところもあります。そしてその後は果物の木の枝にマルツィショルをつけるのです。これは、家に富をもたらすと信じられています。
願いをこめて木にマルツィショルを掛けると、その願いが叶うとも言われています。多くのルーマニアの地域やモルドヴァの村などでは、4月の上旬には木々はマルツィショルで飾りつけられます。
また、ルーマニアの中でもトランシルヴァニア地域では、マルツィショルはドアや窓、屋内の動物の角などに掛けられます。これは、邪気を払うことができると考えられているためです。
その他にも地域によっては、3月1日に降った雨水で顔を洗うと、美しく健康的でいられると言われていたり、女の子は雪で洗うと愛されるようになる、と言われていたりしています。

Sânziene 【スンズィエネ】　（日本名「サンジエンの儀式」）

　ルーマニアでは６月２４日に夏の訪れと聖ヨハネの誕生をお祝いします。また、この日は農作業が終わり、収穫の時期に入るという意味もあります。この日はお祝いなので洗濯等の家事をしてはいけません。古い行事ですが、一部の地方の村町では現在も受け継がれています。

　　この祭日のモデルとなっているのはSânziene(スンズィエネ)というルーマニアの妖精達で、様々な言い伝えがあります。このスンズィエネはお花の名前にもなっています。祭日の夜には天が開き、妖精達が出てきて人里離れた場所で彼女達の踊りを楽しむそうですが、そのときの踊りを見てしまった人は死ぬまで治らない病に襲われるといわれています。彼女達は自然に囲まれて暮らすとても美しい女性の姿をしていて、スンズィエネの日は聖歌隊とともに舞い踊りながら歌います。また、彼女達は植物に病気を治療するための特別な力を与え、雹の嵐から農作物を守り、動植物の繁栄に貢献していると考えられています。
反対に、この祭日に敬意を表さない人がいたら、病気になったり、嵐に巻き込まれたり等の罰が与えられ、植物に治療するための特別な力も与えずにお花のにおいを奪っていってしまうといわれています。普段は人間の気を引くためにいたずらをすることもあるそうです。

　地域によってそれぞれの祝い方があり、例えば、地方に住む少女達はSânziene（スンズィエネ）という黄色い小さなお花（日本名：アキノキリンソウ）を摘みにいき、花冠を編みます。その後、花冠を屋根の上に向けて投げます。花冠が屋根に引っ掛かって落ちて来なかったら、近い将来そこで結婚式が行われることを意味します。また、いくつかお花を残しておいて、枕の下に入れて眠ると夢で自分の運命の人を見ることができるともいわれています。

　その他の地域では、Drăgaica（ドラガイカ）というダンスを踊ります。少女が二人一組になり、それぞれが男の人と女の人の格好をして、馬が気に入った家の周りでクロスジャンプや抱擁を繰り返しながら踊ります。このドラガイカが来た人は幸運を引き寄せ、不運を追い払うことができ、その年は豊作になると言われています。このとき、この日までの集大成を披露するという意味を込めて、りんごやさくらんぼ、きゅうり、チキンを用意して分け合います。

　もう一つ珍しい風習があります。日の出とともに、女の人たちは川で体を清めた後、朝露が沢山ついた草の中で転がります。この風習を行った女の人は清潔で健康に過ごすことができ、病気や問題からも遠ざかるといわれています。また、母になりたいと願う女性達は妊娠する可能性が上がるともいわれています。

　この日の雨は富の訪れと考えられているため、雨が降るとトウモロコシやワイン、沢山の料理を準備してお祝いします。また、悪い方の言い伝えもあり、Sânziene(スンズィエネ)が始まるずっと前からカッコウが鳴いていたら干ばつが起こり、反対にスンズィエネが終わってもずっと鳴いていたら戦争や飢餓、その他の悪いことが起こるといわれています。その他にも、スンズィエネの日までにトウモロコシが十分に熟れていなかったらその年の秋は不作になる等、様々な言い伝えがあります。