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遅れてきた国が先行組を脅かすルーマニアとブルガリアの低力

週間ダイヤモンド

2007年にEU加盟を許されたルーマニアとブルガリア。

 没落するしかなかった辺境に今、コストの低さと語学力に着目した外資が続々と参入、生産・業務基地として04年の先行組を脅かす。
 ルーマニアの首都ブカレストの中心部からクルマで東に向かって約20㌔㍍走ると、市内の交通渋滞とは別世界の農村地帯が広がり始める。ルーマニアの片田舎、ブラネスティ村で10月4日、日本の総合電動工具メーカーのマキタ愛知県安城市。東証一部上場)は、英国、ドイツに次ぐ欧州で三番目の生産工場を立ち上げた。

 マキタは、日本国内より海外ではるかに名高い。2007年度3月期の連結売上高は279元値円で、世界第3位だ。欧州以外にも、米国、カナダ、中国、ブラジルに製造拠点を持つ。連結売上局に占める海外比率は83%という。知られざるグローバル企業である。

 海外7番目の製造拠点に、07年1月にEU加盟を果たしたばかりのルーマニアを選んだのはなぜか。ブラジル、ドイツエ場の駐在経験がある明石浩二・マキタEU社長は、こう説明する。
ルーマニアを西欧諸国向けのモノづくりを担当する低賃金国と見るか。それとも、ルーマニァ自身が発展するポテンシャルを持った国と見るか。もちろん、われわれは後者だ。マニユァルを整備して作業工程、手順の理屈を教えれば、生産性は大きく向上するだろう」と力を込める。

 1989年のチャウシェスク政権崩壊以降、ルーマニァ経済は欧州最底辺に沈み、経済発展に不可欠な技術教育を向上させようがなかった。過去10年以上、教師の収入は全職種の最低水準にあり、若者は高校や大学で技術を勉強しても就職口がなかった。
 明石社長の目には、この状況が宝の山に見えた。「彼らのモチベーションはいくらでも上がる。最初から不良品を発生させない。“日本式のやり方”をマスターしてもらえれば、コスト、品質ともに中国の工場と伍して戦える。地理的特性を加味すれば、新興市場へのアクセスでは断然有利になる」。そこで、明石社長は、ブラネスティの工業高校で特別クラスを受け持ち、教師と生徒のそれぞれに日本の技術を教えることにした。まずは教師から始める。現在までにブラネスティエ場には2700ガ吋(約43位2000ガ円)を投資しており、電動ドリルやグラインダーなど製品の大半はEU域内市場やロシア市場に向けて輸出する構えである。陸路であれば、EU域内は2~5日で製品を届けられる。海路では、ルーマニア東部の黒海沿岸にある地域最大のコンスタンツァ港までクルマで230㌔㍍の距離である。いったん黒海に出れば、ロシアもトルコも目の前だし、中東諸国も視野に人ってくる。

技術の熟練度が高く語学力に秀でている

 旧社会主義国のルーマニアは、食料自給率100%を上回る農業大国だったが、第二次世界大戦後に旧ソビエト連邦の影響下で、旧東ドイツに次いで工業化を進めた特異な国だった。旧西側では、西ドイツと最も関係が深かった。旧ソ連・東欧諸国は、旧ソ連が主導して共産圏内で国際的分業を展開、たとえば、国別に次のような役割分担があった。旧ソ連(大型機械、自動車、コンピユータ、化学品など)、ポーランド(鉄鋼、船舶など)、旧チェコスロバキア(軍用車両、軍需品など)、ハンガリー(電気・電子機器など)、ルーマニア(穀物、粗鋼、繊維など)、ブルガリア(農業機械、建設資材など)である。

 だが、長らくルーマニアを支配したチャウシェスク大統領は、旧ソ遠の計画経済に反発し、独自路線の工業化を推し進めた。あらゆる分野の工業製品を製造できるようになるべく、国内各地に工業地帯を造成した。国営企業は、飛行機から自動車や白物家電まで手がけた。言うまでもなく、チャウシェスク路線は破綻じたが、ここで重要なのは、旧社会主義国時代のルーマニアでは、農業従事者以外の男性は技術者になるのが当たり前とされていたという特異性である。周辺の東欧諸国よりも技術者の層が厚く、ベテラン作業者の数も多いという下地があったのである。外資系企業の参入が活発になった2,000年以降に進出してきたドイツなどのメーカー関係者に聞くと、「人件費の安さ」に加えて、「工場作業員の熟練度が高い」という答えが多く返ってくる。加えて、語学力の高さがある。現在、ルーマニアでは小学校の3年生から第一外国語(英語かフランス語を選択)の授業が週に3時間行なわれており、5年生からは第二外国語が必修になる。第一外国語の段階で大半の生徒が選ぶので、英語は全国的に普及している。高卒レベルでも英語には不目由しない。大卒の技術者であれば、英語かドイツ語を自在に使いこなす。

 中東欧では拠点の集約・再編が進むもっとも、外国語を駆使する能力に長けているのは、中東欧諸国の人びとの特質である。たとえば、02年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、ハンガリーの首都ブダペストに計9ヵ国語をカバーする欧州事業のサポートオフィスを開設し、語学に堪能なハンガリー人を現地採用した。たとえば、ドイツ語を話せるハンガリー人にドイツの業務をサポートさせれば、ドイツ人の約4分の1の給料ですむのである。現在は、GEが40%出資する別会社に衣替えしたが、すでに18ヵ国語までカバーエリアを広げ、主にGEの欧州事業をバックアップしている。米マイクロソフトは、ルーマニア人の語学力の高さに注目し、今年2月、首都ブカレストに「ウィンドウズ・ビスタ」などの新ソフトウエアのグローバル・テクニカルサポート・センターを開設した。欧州、中東、アフリカまでの技術サポートを行なうために、男女300人を採用、地元では大きなニユースになった。EUは東へ、東へと拡大する。当然、グローバル企業――装置産業すらも-が生産拠点を東へ移転する動きも加速する。日産自動車系列の部品メーカーであるカルソニツクカンセイは、ポーランドに工場を持っているにもかかわらず、ルーマニアでも07年末の稼働を目指して、新工場を建設中だ。在欧州の自動車業界関係者によれば、「英国、オランダ、スペイン、ポーランドの事業規模を縮小して、約25位円を投資したルーマニアの新工場に欧州拠点を集約しようと動いている。日産自動車のロシア工場、仏ルノー(ダチアを含む)のルーマニアエ場、スズキのハンガリーエ場などへ供給するための拠点再編」というダイナミックな戦略に基づいている。最近では、04年にEU加盟したポーランドやチェコ、ハンガリーなどの先行国を飛び越して、中東欧で初めての生産拠点を07年に加盟した国々に建設する事例も出ている。フランスの自動車部品メーカーのモントゥペ社は、自国内やスペインに工場を持つが、8、000万ユーロ(約128億円)をブルガリアに投資した。今年10月に、北部で新工場を立ち上げたばかりだ。

EU新基本条約で道路整備が再開

 去る10月19日に、『EU新基本条約」が採択されたことで、EU拡大は現行の「ニース条約」で想定する27ヵ国以上に発展する可能性が出てきた。14年前の93年に欧州委員会が打ち出した「汎欧州運輸回廊計画」(97年には中東欧へも拡大)は、全部で10ルートあるが、EU加盟が遅れた国ほど道路の整備が進んでいない。これらの計画は、EU拡大の方向性が強まったことで、再び動き出す。たとえば、「回廊4」が実現すれば、ドイツ・ベルリン~チェコ・プラハ~スロバキァ・ブラチスラバ~ハンガリー・ブダペスト~ルーマニアニァィミショアラ~ブカレスト~トルコ・イスタンブールまで、全長約3、258㌔が一本の幹線(道路、鉄道、水運)でつながるのである。そのときまでに、中東欧の運輸物流インフラは格段に整備され、産業の活性化が急ピッチで進むはずである。

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