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ルーマニアのプロファイル

道路と自然 2005年126号

はじめに

ルーマニアは名は有名だが、観光された方の少ない国で、2000年まで入国にはビザが必要で、今でも麻布の大使館の一隅にビザ専用の事務室が残っている。現在でも情報の少ない国で個人旅行をするにはかなりの勇気が必要である。

小生がルーマニアに行きたいと思った時はやっとビザの問題が解決した直後で、どこの旅行社も実績はなく「清水さんのお宅ですか、ご本人で」「はい」「実は明後日締切りのルーマニアの件ですが、現在12人で、本来不成立なのですが、初めての企画なのでぜひ実施して今後の参考したいので、12人が全員賛成なら、採算を度外視して実施しようとおもってます。しかし、12人がお1人でも欠けると無理なので、お気持ちを聞かして頂きたい……」という電話があり、追っかけて「皆様お気持ちが揃いましたので……」という経過で挙行されたほどで、今でもラッキーだったと思っている。

小生の撮影の主たるテーマは古いキリスト教文化で、カタルーニャのロマネスクに集中していたのだが、「モルドヴァの教会壁画」という写真集の存在を教えてくれた方がおられ、未知の国ルーマニアを探訪したいと熱くなっていた。しかし、言葉の問題・ビザの問題・情報の不足などの事情で個人での実施は不可能に近く、ほぼあきらめていたが、A社の企画は辺境の地マラムレシュの「木の教会」「フレスコ画のある五つの教会」など小生の熱望するスポットを中心に組まれ、旅程も10日ほどで、手頃だったので即応した次第である。ルーマニアのベストシーズンはバラの咲くころで、五つの教会の庭は花の園である。しかし、われわれの出発は4月14日、北の国ルーマニアでは冬の終わりかけで、北辺では降雪の恐れすらあった。実際ウクライナとの国境付近の峠では雪の景色を楽しめ、かつ、降られずにすみ幸運だった。

ブカレスト到着は深夜12時近く、添乗員のK嬢は「この時間になると空港にはどなたもいませんから、急いでスーツケースの中から、今夜必要なものだけを出してください。ルーマニアの国内航空は手荷物10キロ以内の制限がありますから、皆様のスーツケースはバスでスチャヴァまで運びます」の一声で、無人の荷物到着ロビーで作業を遂行し、通貨レイに換金して、バスでホテルに向かった。腹ぺこだが、その夜は寝るだけだった。

ルーマニアヘのアクセスについて

翌朝、空港に戻ると「皆様は運がよろしいようで、20人乗りの小型機から50人乗りの中型機になりました」という知らせである。それでも、搭乗のおり、小生の写真機材はとがめられたが、なんとか許可をもらい、最初の目的地スチャヴァに着いた。昼食後、昨夜われわれをホテルまで送ってくれたバスの運転手がにこやかに迎えてくれる。徹夜で疲れていたようだが、さすがはプロ、個人ではこんな離れ業は不可能である。説明が遅れたが、ルーマニアには高速道路は一本もなく、個人旅行では鉄道を中心にバス、レンタカー、タクシーの組み合わせ以外にアクセスはないそうである。その頼りの道路も春は極寒の冬期直後という条件で状態は最悪、例年春から秋まで半年かけて補修し、冬期にぼろぼろになるという繰り返しだそうだ。

観光は北の街スチャヴァから

スチヤヴァは歴史のある街で、1388年にはモルドヴァ公国の首都となり1565年ヤシに転都されるまでは文化・行政の中心地であった。観光の目玉は大城塞の廃墟で、規模も大きく、1476年のオスマン・トルコの大攻勢にも耐えモルドヴァ公国建国の礎になった遺跡だそうである。入り口で撮影料を取られたが、これは、どこに行っても同じで、少額なので気にならなかった。ルーマニアはかなりインフレ状態で、1円が250レイ、1ドルは2万6500レイときくと、納得していただけるとおもう。ただ、日本に比べると物価は安いようで、最後の夜ブカレストのオペラ座の入場料が3ドルと聞かされて、感激したことを付記させていただく。

大要塞の観光を終え、バスが外壁にフレスコ画のある五つの教会へ向かい、緩やかな坂を下りると、右手に大きな教会が見えてきた。すると、同行のK教授が「Kさん、ここには寄らないの」と質問され「はい、寄りません」「寄ってよ」「では、予定外ですが15分だけ、手短にお願いします」ということになり、聖ヨハネ教会に立ち寄れた。このことは、今回の小生の撮影ツアーの内容を激変させてくれ、撮影にも気合いがはいった。

撮影時間15分といっても、移動時間を考慮すると、10分もない。はじめてのフレスコ画のある教会で戸惑いながらもなんとか、1本撮った。その最後の1枚は教会内のヨハネの間という小祭壇だった。薄暗い所なので正確な人数はわからないが、司教を中心に数人の信者が一心に祈っている。本来、撮影すべきテーマでないので、かなり迷ってシャッターを切った。露光時間30秒。この時点で、この写真が撮れている可能性はないと思っていたが、この光景は強烈で、国民のルーマニア正教への帰依がいかに大きいかを強く印象づけられた。

最初の世界遺産のフレスコ画の教会フモールの撮影は順調で、受付の修道尼CASIANAさんのポートレイトも撮らしていただき満足そのものだったが、その次のヴォロネッツでは教会内は勿論撮影禁止、その上教会の外でも三脚の使用は禁じられ、監視がついた。今回の取材で一番の目的はルーマニア正教の信仰のルーツともいえるイコンの撮影で、「ウラジーミルの生神女」のようなイコンとの出会いを期待していた。]ギリシャ正教でのイコンは「天国を映し出す鏡」で、この鏡を通して神の国を想起し、祈るとされている。ロシア正教のイコンはかなり紹介されているが、ルーマニアのは少なく、それだけ期待は大きかったが、自由に撮影できたのは、最初のフモールと最後の無人の村の教会アルボーレだけだった。

フレスコ画の教会は説明より写真の方がご理解いただけやすいと思うので細部は省略させていただき、木の教会がのこっているウクライナに近い北辺の地マラムレシュの紹介に移らせていただく。マラムレシュ地方はルーマニアの最北辺にあり、アクセスは車しかないようである。プリスロブ峠の雪の景色、森の中での走行中羊の大群を移動させている牧童ふうの老農夫と犬(バスはこの間停車)など、この地方固有の風物を楽しみながらの数時間の大移動の結果やっと辿り着いた。

この地は20世紀初頭まで90%が森林地帯という自然条件から発想されたのであろう、大きな木の教会が世界遺産に指定されている。なかでも、シェルデシテイの教会はその高さ54メートル、世界最長の本の塔で、建造は1724年という。保存状態の一番いいのは、ボクダン・ボーダ村の教会で、教会の様式はフレスコ画の教会とほぼ同じで、入り口から前堂、中堂、神の宿る至聖所という3室の構成で、中堂の奥の壁がイコノスタシスとよばれ、聖母とキリストを中心としたイコン群の掲げられた信仰の中心である。不思議なことに、最近の『地球の歩き方リレーマニア編』には「木の教会」の記事はない。アクセスが極端に不便なので割愛されたのであろう。しかし、世界遺産でもあるし、新しい木の教会も建設されているので、「負の遺産」といわれているチャウシェスクの建てた「国民の館」を見るよりはるかに価値がある。時間のない方は首都ブカレストの「農村博物館」(野外博物館で公園)に行かれると移築された木の教会、農家、田舎の礼拝所など297棟が楽しめる。

紙幅の関係で「ピエルタンの要塞教会」「シナイアの僧院とペレシュ城」などの紹介は省略させて頂き、残りの紙数はルーマニアで一番有名なドラキュラと中世の面影を色濃く残しているシギショアラに重点を置かせていただく。

シギショアラの歴史は古く、H91年にこの地を長く支配していたハンガリー王の命令でザクセン人が入植したのが歴史の始まりで、中世の面影が色濃く残り、タイムスリップしたような錯覚すら感じさせられる街である。ちょうど昼食時に着いたので、ドラキュラの生家(現在はレストラン)に向かう黒い石の坂道を登ると、ドラキュラが1431年から35年にかけてハンガリー王に幽閉された時もこの坂をと想うほどで、「街全体が世界遺産」という解説も納得である。街の象徴的存在である時計塔、山上教会、骨董店等、和やかな一時を過ごすことができた。プラン城はドラキュラの居城として、ルーマニア観光の目玉的存在だが、史実とは違うようで、トルコ軍侵入防御の最前線として築城され、一方、トルコ対策としてハンガリー王に利用されたドラキュラが伝説化し、やがて古城と結合し、居城説となったらしい。城の最上階への細い階段を登った時、なるほどと思った。よく保存された典型的な中世の城塞である。

首都ブカレストに近づくとホテルはよくなり、ブラショフの四つ星ホテル、アローパレスなどは抜群だった。出発前の説明会でブカレストのホテル、マリオットは素敵なところですから、少々おしゃれなコスチュームもご用意されてはというアドバイスがあったが、オペラ座とマリオットではおしゃれが必要だったと、今でも後悔している。

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