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週刊 世界遺産 2001年4月[25号]、2002年10月[97号]
モルドバ地力の聖堂群
中世、ルーマニア北東部の地で黄金期を迎えたモルドバ公国。彼らが残した聖堂の壁は、この地方独特の美しい壁画で埋め尽くされている。
【ルーマニア・スチャヴァ県近郊/登録年1993年/登録基準・文化遺産①④】
モルドバ公国の栄華を偲ぶ優美な聖堂
北モルドバ地方に点在する世界遺産の七つの修道院は、15~16世紀に、この地で栄光に輝いたモルドバ公国の所産である。オスマン帝国の勢力に屈することなく、国の威信をかけ戦い続けた時の大公、シユテファン3世は戦勝を記念し、次々に聖堂を建て、彼の死後も歴代公国君主がそれを引き継いだ。いずれの聖堂も自然環境に溶け込み、壁に描かれた色鮮やかなフレスコ画が目を引く。
要塞聖堂のあるトランシルヴァニアの村落
15~17世紀、ルーマニアでは、迫り来る外敵から村を守るため多くの要塞聖堂が建てられた。(旧名称「ビエルタンとその要塞聖堂」)
【ルーマニア・ムレシユ県/登録年1993年、凶年範囲拡大/登録基準・文化遺産④】
堅固な三重の防壁によって守られた聖堂
15~17世紀、ルーマニア中部のトランシルヴァニア地方には、約300の要塞聖堂が造られた。オスマン帝国の侵攻を防ぐため、聖堂は防壁で囲われ、食料庫も設けられた。3世紀の間、司教座が置かれたビエルタンの要塞聖堂は、戦火を免れたため、後期ゴシック様式の祭壇や、一つのノブで、同時に15のかんぬきが動く扉などが往時のまま残る。
ホレズの修道院
神の啓示を受けてワラキア公国の君主が建てたといわれるホレズの修道院。
ギリシア十字の聖堂と、聖母子と「最後の審判」の天井画が有名である。
【ルーマニア・ヴルチェア県/登録年1993年/登録基準・文化遺産②】
神のお告げに従って建てられた修道院
ワラキア地方の伝統を継いだ白壁の修道院は、身廊と翼廊の長さが同一のギリシア十字形で五つの聖堂を持つ。聖堂は十字架の各先端と中央にあり、中央の主聖堂の丸天井には、聖母子と「最後の審判」の絵が描かれている。
ある夜、ワラキア公国の君主ブルンコヴェアヌ公の夢に神が現れ、修道院建設の地を告げた。彼は神のお告げに従い、7年をかけて、修道院を建てたのだった。
ドナウ・デルタ
ドナウ河が黒海に注ぐ場所にできたドナウ・デルタは、1万1000年の歳月が育んだ大湿地帯。
数十種の野生動物と約300種の鳥類が生息する。
【ルーマニア・トゥルチェア県/登録年1991年/登録基準・自然遺産③④】
ヨーロッパ最大の湿原は動植物の宝庫
8ヵ国をまたぐ2858Kmのドナウ河はヨーロッパ第二の長さを誇り、黒海に流れ込む手前で、
ヨーロッパ最大規模の大湿原地帯を形成する。面積約6800Km2。
淡水湖、沼地、原生林、湿地、砂地などからなるデルタ地帯は、約300種の鳥類、100種以上の魚類のほか、ヤマネコやオオカミなどの哺乳類が生息する野生動物の宝庫。国の自然保護区にも指定されており、豊かな生態系が広がる。
シギショアラの歴史地区
【ルーマニア・ムレシュ県 / 登録年1999年 / 登録基準・文化遺産③⑤】
商人や職人が築いたルーマニアのドイツ人都市
ルーマニア中部のシギショアラは、中世ドイツの街並みを良好な状態で残す街である。ゲルマン人のザクセン族がH91年にこの地に街を建設して以来、商業の中心地として発展、14世紀には商工ギルド(同業者組合)の自治都市となった。街は小高い丘を中心に広がり、丘の上は行政・文化地区、麓は商業地区となっている。幾度か他民族の襲撃を受けた後、13~14世紀には丘の上に城壁も築かれた。街には12~16世紀のドイツ風の建物が並び、当時の建築様式の変遷を知ることができる。
マラムレシュの木造教会
【ルーマニア・マラムレシュ県 / 登録年1999年 / 登録基準・文化遺産④】
山間の村に残る伝統的な木造聖堂
ルーマニア北部、林業を生業とするマラムレシュ地方には、18~19世紀に建造された木造の聖堂が多く残り、異なる建築技術の代表例としてハつの聖堂が世界遺産に登録された。いずれもナラやマツの一枚板を材料に、釘を使わない伝統的な技法で建てられ、内部を東方正教会の信仰のよりどころであるイコン(聖画像)が埋め尽くす。
オラシュティエ山脈のダキア人要塞
【ルーマニア・フネドァラ県、アルバ県 / 登録年1999年 / 登録基準・文化遺産②③④】
ローマ軍に備えた2000年前の要塞
ルーマニア中西部、オラシュティエ山脈の麓に残る六つの要塞は、紀元前1~後2世紀、この地で産出される金銀を狙うローマ軍に備え、ダキア王国(現ルーマニア)が築いたもの。自然の地形を利用し、居住区を計画的に配置した要塞跡には、陶器工房、貨幣鋳造所の跡なども見られ、ダキア人が高度な文明を持っていたことが窺える。
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