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Travel Journal 2000年4月号
近頃は日本にいながら、世界中の料理が食べられるが、問題はどの店がうまいかってことだ。そこで政府観光局のお歴々に、日本における自国のお勤めレストランと料理を聞いてみた。さらに、その料理が本国ではどんな風に食べられているかを、レストランシェフに直撃取材。
秋はサルマーレを仕込む季節
スイスのフォンデュやロシアのボルシチなら、たとえ現地を旅したことがなくても知っているものだが、ルーマニア料理となると向こうに行った経験がない限り、料理の名前1つ思い浮かばない、というのが普通だろう。ダリエのシェフを務める及川さんでさえ、ルーマニア料理店をやってみないかと持ちかけられた時、知っていることは何1つなかったという。と言っても、もう20年も前のことだが。即刻現地へ食べ歩きの旅に詣で、今回注目の1品として取り上げた「サルマーレ」もその時初めて口にした。
「それまで経験しだことのないロールキャベツの味に最初は驚いた」と当時を振り返る及川シェフ。サルマーレは酸味が利いたロールキャベツなのだ。というのもキャベツを丸ごと塩水の中に漬け込んで、酸敗させるところから調理が始まり,それがサルマーレ全体の味を特徴づけているからだ。
キャベツにしろキュウリにしろ今では、年中緑黄食野菜が手に入るが、昔は冬の間と言えば,根菜類しかとれなかった。ピクルスも冬の保存食として生まれたものだが、サルマーレの発想もそこから来ている。昔の風習は今でもルーマニアの家庭に受け継がれており、秋になるとどの家庭でも一斉にサルマーレ用のキャベツを塩水に漬け込む。ほかにもピーマンやカリフラワ、などを酢漬けし、それらを保存するために団地の地下には広い保存用スペースが設けられているというから、食文化の違いに驚く。
サルマーレはそうやって酸味を付けたキャベツの葉を1枚づつはぎ、豚肉,牛肉、ベーコン、タマネギのみじん切りと米を練ったものを巻き込んで作る。それを少量のスープで蒸し煮にして、水分がなくなったらでき上がり。でも日本のロールキャベツみたいに大きくはない。指2本分くらいの、女性ならふた口ほどで食べられるサイズである。だからパクパクといくつでも食べられそうな気になる。
ルーマニアのレストランでは、-度に何千本というサルマーレを作る。たくさん作ったほうがおいしいし、そもそもサルマーレ自体、人が大勢集まった時には欠かせない料理なのだ。例えば結婚式の時,誕生日パーティーの時、サルマ-レは必ず出てくる。
そしてルーマニアの人たちは,かなりよく食べ、よく飲むらしいから,山のように作ったサルマーレもあっという間になくなるのだとか。
「かなりよく飲む」という意味では、例えば町で知人に会った時、日本なら「お茶でも」となるところが、彼らの場合はワインになる。農村部へ行けば、朝から梅で作った蒸留酒をあおって、「んじゃこれで、いっちょ仕事に行くべか」ってな感じでグビグビッとやるらしい。健康にいいっていうのが理由らしいけどね。
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