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「ジョルジュ・エネスク」国際音楽コンクール
1958年から2年ごとに開催されている、世界的にも有名でハイレベルな音楽コンクールです。ルーマニアの首都であるブカレストで開催されており、チェロ、ヴァイオリン、ピアノ、作曲の4部門があります。日本人も数多く出場していて、2016年には石川琢磨さんがピアノ部門で2位になり、日本人として初の入賞を果たしました。2021年にはルーマニアと日本の外交関係樹立100周年とジョルジェ・エネスク生誕140周年を記念した全国ツアーコンサートが日本で開かれる等、日本でもジョルジュ・エネスクにちなんだイベントが開催されています。
このコンクールの名前の由来にもなっているジョルジュ・エネスク(1881~1955)はルーマニアを代表するヴァイオリニストであり、ピアニスト、指揮者、作曲家でもある多才な音楽家です。コンクール以外にも彼の名前を取った博物館やオーケストラがあり、なんとルーマニアの紙幣(5レイ)にもなっています。ジョルジュ・エネスク博物館では彼が愛用していた楽器達や、暮らしていた部屋を見ることができます。
「ジョルジュ・エネスク」国際音楽祭
コンクールが開催されない年にはコンクールの入賞者達による音楽フェスティバルが開かれ、世界中の有名な音楽家達が集う大きな音楽の祭典となっています。Madrigal マドリガル合唱団
マドリガル合唱団は伝統的なルーマニアを代表する合唱団です。彼らがブカレストで毎年開催しているクリスマスキャロルのコンサートは地元の伝統であり、ブカレストで最も長く続いている文化イベントの1つになっています。マドリガル合唱団は1963年にマリン・コンスタンティン教授によって設立され、ブカレスト国立音楽大学に属していましたが、1968年に独立し、プロ合唱団になっています。世界中で数々の公演をしており、日本にも何度か来ています。今ではUNESCOから歴史的な遺産の一つとして正式に認められています。
マドリガル合唱団が設立された1960年代はルーマニアの共産主義時代の真っ只中でした。そんな時代背景の中、彼らが歌ったキャロルは自由の象徴としてルーマニア人に大きな影響を与えたといわれています。彼らは共産主義時代以前の音楽を探求しながら宗教音楽の新しい美学を構築し、教会で演奏される伝統的なものとは一風違った芸術的なイベントを開催していました。当時の共産党はリゴレット、カルメン、アイーダなどの有名なオペラ作品もすべてルーマニア語で歌うこと以外は一切認めていなかったため、ルーマニア語に合うように音を変える必要がありました。しかし、マドリガル合唱団だけは作品のもともとの言語や芸術を尊重し、コンサートプログラムに作品のルーマニア語訳を載せる代わりにそのままの譜面で演奏するという独自のスタイルを貫いていました。当時合唱団の指揮者を務めていたマリン・コンスタンティンは“We are different, but when we sing, we are together, we are the same, and we are equally important. Happy Holidays, be healthy, and have peace in your souls!” (私達はひとりひとり違うが、歌っている時、一緒にいるとき、私達の中に違いはなく、誰もが同じように大切な存在である。良い祝日と健康を。そして、あなたの魂が平和でありますように!)という言葉を遺しています。
また、マドリガル合唱団は共産主義時代に国外でも活動していた唯一の組織ともいわれていて、驚く事に当時既に世界各国でツアーをしていました。世界各国で数々の公演をする中で、カンヌ国際映画祭で最高賞とされているパルム・ドールや、ドイツ音楽批評家賞、ルクセンブルク大公アドルフ賞等の名だたる賞を受賞しています。2016年には国際連合の国際サミットでジーン・ヌスバウム賞とエレノア・ルーズベルト賞を受賞し、正式に自由と希望、平和を象徴する大使として認められました。
2011年には60,000人以上もの子供達が参加するカントゥス・ムンディ・プログラムという大きなプロジェクトの運営を開始し、ルーマニアの発展途上地域の子供達の音楽教育を支援する等、現在も活動を続けています。